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第50話  

だが、オーナーに仕えるようになってから、彼も様々なことを学んだ。

 時として、暴力は問題解決の手段とはならない。

 それに、上の立場にある人間が、暴力で解決を図ることほど愚かな行為はない。

 今では彼は、むしろ、地位や権力、そして圧倒的な実力を見せつけることで、相手を屈服させることに快感を覚えていた。今、自分の足元に跪いている男のように、自分の名前を聞いただけで土下座をして謝罪する姿を見るのが、たまらなく気持ちいいのだ。

 「お前らもこっちに来い!」石川は、残りの男たちに言った。

 男たちは、震えながら石川の前に進み寄り、万里と一緒に跪くと、自分の頬を叩き始めた。

 万里でさえ逆らえない相手に、彼らが歯向かうことなどできるはずもなかった。

 数分後、床に跪いていた男たちは、皆顔を腫らし、口角からは血が流れ出ていた。しかし、誰も手を止めることはできなかった。

 もし石川が自ら手を下せば、平手打ちで済むはずがなかったからだ。

 「もういい、今日はここまでにしてやる」石川が言った。

 「ありがとうございます!虎様!」男たちは、安堵の表情を浮かべた。

 ちょうどその時、森岡が部屋に飛び込んできたのだ。

 部屋に入ると、スタンガンを持ったガードマンが20人以上もいて、数人の男たちが床に跪き、顔は腫れ上がり、口からは血が流れていた。そして、美咲がソファに座っていた。

 「美咲!」

 「お兄ちゃん!」美咲は森岡の姿を見ると、再び泣き出しそうになった。

 森岡は慌てて美咲に駆け寄り、彼女を抱きしめた。

 「大丈夫だ!もう大丈夫だから!」

 「あなたが森岡様でしょうか?」石川が声をかけてきた。

 「ああ、俺が森岡翔だ。妹を助けてくれて、本当にありがとう」

 「いえ、森岡様。この度は、私の店でこのようなことが起こってしまい、大変申し訳ございませんでした」石川は丁寧に頭を下げた。

 これはオーナーが特に気を配るようにと言い渡した相手だったので、彼は当然、軽はずみな行動は取れなかった。

 「森岡様、彼らはどうしましょうか?」石川は尋ねた。

 床に跪いている男たちは、息を殺して森岡の言葉を待っていた。

 先ほどの会話から、森岡が只者ではないことは明らかだった。彼こそが、金碧輝煌カラオケの社長の友人なのだろう!

 森岡は、床に跪いている男たちを冷
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